妹プロ ifストーリー柚希END

妹プロ ifストーリー柚希END

last updateLast Updated : 2026-09-22
By:  白石マサルUpdated just now
Language: Japanese
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自己顕示欲の強い妹、「佐藤柚希」はヲタクでボッチの兄、「佐藤友也」をリア充にするべく行動を開始する。友也をリア充にするプロデュースの中で『思い出の中の友也』を重ねる。順調にリア充になっていく兄に対して恋心を抱く新島楓や水瀬南、そして柚希の親友である染谷恵美の決意を知る。プロデュースしていく中で友也に対する気持ちの変化に気づき、動揺する柚希。そんな柚希を他所に友也を取り巻く恋愛模様が動き出す。その時柚希は……。

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その1
 卒業式、私はある決心をして佐伯菜々率いるギャルグループの前に立っている。「最後だから言うけど、私、あの佐藤友也の妹なんだよね。アンタたち散々悪口言ってたけど、これでお別れだと思うと清々するよ」「は? いきなり何なの?」「もう二度と顔見せないでね。私はアンタたちが一生かけても行けないような高校に行くから会うことはないけどね。ばいばーい」 言いたいことを言ってスッキリした私は教室を出ていく。 菜々達は呆気にとられた顔をしていた。 下駄箱で靴に履き替えていると、めぐが焦った様子で追いかけてきた。「どうしたのゆず――」「ごめんめぐ、私急いでるから! またね」 無理やり話を終わらせて一人で帰る。 公園に差し掛かった時に後ろから菜々に声をかけられた。「おい佐藤、ちょっとツラ貸しな」 ―――――― ―――― ―― 「マジうけんだけど~」「何すわっちゃってんの~?」「お腹でも痛いんですか~?」「「ぎゃはははは」」 私はお腹を押さえてうずくまる。 私からワザとけしかけたとはいえ、いきなり暴力なんて本当にどうしようもない奴らだ。「まさかアンタにあんなキモイ兄貴がいたなんてね~」「思い出しただけで吐きそうー」「だからどうしたのよ! それより私を蹴った事謝りなさいよ!」「は? どうでもよくないっしょ~!」「そうそう」「まさかアンタがあの佐藤友也の妹だったなんてね~」「どうしてかくしてたのかな~? 佐藤柚希ちゃ~ん」「それは、私は私だし! お兄ちゃんは関係ない!」 自分で招いた状況だけど、お兄ちゃんをバカにされるのは本当にむかむかする。 本当のお兄ちゃんを知らないくせに。 そう思いながら力強く反論する。 菜々たちはそれを嘲笑う。「いや、関係大ありでしょ~」「そうそう」「あんなキモイ兄貴いるやつと一緒に居たくないし~」「実はアンタもヲタクなんじゃね?」「きゃはは、言えてる~」「私は違う!」「ふ~ん。ま、どっちでもいいけどね~」「どういう意味よ?」「アンタ高校兄貴と同じ所行くんだろ? アタシたちは学校ちがうからさ~」「だから何? あなた達に関係ないでしょ?」「そ。もう関係ないね~」「だから二度と友達面しないでね~」 さっき私が放った言葉をわざとらしく
last updateLast Updated : 2026-07-28
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その2
 お兄ちゃんのリア充計画に協力を申し出てくれた。 計画通りにいった事で思わず口角が上がった事をお兄ちゃんは見逃さなかった。「あ~あ、上手く行ってると思ったんだけどな~。でも、流石の洞察力だね。普通の人なら気づかないんだけどね」「どこまでが計算なんだ?」「質問が違うよお兄ちゃん。『何処からが正解』だよ?」 その言葉を受けてお兄ちゃんは面食らった表情をした。 そして、躊躇いがちに尋ねてくる。「もしかして、ギャル達に虐められていたのも?」「せいか~い」「めぐは? 親友だって言ってたよな? そんなめぐも利用したのか?」「うん、利用した」 ひとつひとつに機械的に答えていく。 だってもう何も隠す必要は無いんだから。 そして質問に答える度に、お兄ちゃんの声に熱がこもるのを感じた。「なんで……どうしてそんな事が出来るんだよ? 親友だって言ったのは嘘だったのか!?」 お兄ちゃんがここまで感情を露わにするのも久しぶりな気がする。 それはそれで計画がうまくいっているって事なのだろうけど……。 よく考えてみたら、お兄ちゃんから責められるって事は今までなかったかもしれない。  「うるさい。 お母さんたち起きちゃうでしょ」 あまりの緊迫感にそう言うしかなかった。 そしてお兄ちゃんは私の肩を掴んで、怒気を孕んだ声で言った。「どうしてこんな事したんだよ!?」 『どうして……?』 昔のお兄ちゃんに戻って欲しい。 ただそれだけなのに。 どうして気づかないの? でもそんな事、今は口が裂けても言えない。 怒りと悲しみが入り混じった、自分でも整理できない感情。 思考が追いつく前に私はお兄ちゃんの手を振り払っていた。「お兄ちゃんの所為でしょ!?」「俺の……所為?」 何も分かっていないお兄ちゃんに怒りが爆発してしまった。「そうだよ! お兄ちゃんがいつまでも変わろうとしないから! 中学の時は学校中から嫌われていたお蔭で私は実の兄が学校一の嫌われ者という悲劇のヒロインでいられた。でも高校では精々クラスでいつも一人で居る奴程度。それじゃ私が困るの!」「どういう意味だ? どうして柚希が困るんだ?」「はぁ~。もうこの際だから全部言っちゃうけど、私って常に皆から注目されたり、認めて貰いたいんだよね。その為に私は色んな努力をしてきたつもり」 冷静になら
last updateLast Updated : 2026-07-28
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その3
 高校生活二日目。 クラスは既に打ち解けていた。 特に男子は、どの子が可愛いという話題で持ちきりだった。 2年の新島楓先輩という人が、学校で一番人気らしい。  放課後、ジャージに着替え、めぐとテニスコートへ向かう。  テニス部の体験入部の合間に、新島先輩と会話した。「佐藤さん、だっけ? テニスはずっとやってたの?」「はい。3年間テニス部でした」「そうなんだ。どうりで筋がいいわね。それに華もあるし」 そう言ってニッコリ笑う。 素直に向けられている笑顔ではなかった気がした。 謙遜することなく私は「ありがとうございます。新島先輩から褒められるなんて思ってなかったので、嬉しいです」 と口角を上げて答える。 先輩は一瞬目を見開いたが、直後に「フフッ」と笑った。「……佐藤さんとは仲良くなれそうだわ。そうだ、柚希ちゃん、って呼んでもいいかな?」「もちろんです。これからもよろしくお願いします、先輩」   その後も入部体験は続いた。 私とめぐは新島先輩に気に入られたらしく、色々と話した。  体験入部が終わり、めぐと帰路に着く。 来週から本格的に部活が始まる。「優しい先輩ばっかでよかったね~」「そうだね」「特に新島先輩! 学校一のアイドルなんて聞いてたから少し怖かったけど、すっごい親切だったよ」「……うん。そうだね」 めぐは素直に嬉々として新島先輩に懐いている。 だけど私の心には何か引っかかるものがあった。  あの人は私と同じかもしれない。  杞憂かもしれないけど、新島先輩はマークしておこう。「そうだ、めぐ。日曜日空いてる? また協力して欲しいの」「うん。いいよ! 私も友也さんとお話ししたいから」 め
last updateLast Updated : 2026-07-29
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その4
 今日はめぐと約束した日曜日、以前のようにウチで会話の実践訓練をする事になっている。「いらっしゃい。さ、入って入って~」「お邪魔しまーす」「今日はありがとね」「ううん。私でよければいつでも協力するから」   めぐをソファーに座らせ、お茶を出し、しばらくするとお兄ちゃんが降りてきた。  2人は軽く挨拶をし向かい合って座る。 私は二人を同時に見渡せる位置に座る。 さて、ここからどういう話題に持ち込むのかな~。「今日は敢えて学校の制服を着てきたんですけど、どうですか?」「凄く似合ってるよ」「有難うございます……」 と言って顔を赤くする2人。 あぁもう、見てらんない。「めぐー、ちょっとこっち来て~」「なにー?」 「制服を褒められて嬉しい気持ちはわかるけど、自分から話題提供しちゃダメ」 「あっ! そっかぁ。ごめん~」  私が指摘すると、口を一文字に結んでそのまま席に戻った。 素直なところもホントかわいい。 その後、お兄ちゃんの観察眼も冴え渡り会話が弾んだ。 ワンポイントアクセサリーに気づいた時は流石の私も驚いた。 既に日が落ちかけていたので「それじゃ、今日はお邪魔しました」 と言ってめぐは帰っていった。 お兄ちゃんを呼んで早めの会議をする事にした。「どうだった?」「やっぱり兄妹なんだなって思った」 手ごたえアリと言わんばかりの顔で訊いてきたのでそう答えると、ポカンとした顔をしていた。 「どういう意味だ? 兄妹なのは当たり前だろ」「そうじゃなくて、観察眼の事」「観察眼?」「そう」 以前にもまして観察眼が鋭くなったようだ。 めぐにはホント感謝しなきゃ。「私も最初から全部出来てた訳じゃないんだよ。クラスで人気のある子を観察してそれを
last updateLast Updated : 2026-07-30
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その5
 土曜日、部活を終え家に帰ってきた。 お兄ちゃんは今日、グループで買い物に行ってる。 お父さんが起きて部屋から出てきた。「おかえり、柚希。友也は……今日いないのか」「うん。そうみたいだね」「そうか。最近のあいつは変わったな」 「うん」 お父さんもさすがに気になってきたのかな? これがきっかけで仲直りしてくれたら……。 その後お母さんも帰宅し、三人でリビングでくつろぐ。 しばらくすると、お兄ちゃんが帰ってきたようだ。 家族がリビングに集合している時は相変わらず部屋まで一直線だ。「全く、顔くらい出せと言うのに」「でも、最近の友也は年頃の子みたいになってきたわね。えーっと、何ていうのかしら……りあじゅう?」  お母さんも変化に反応した。 外見や雰囲気からでもいい。 少しずつ戻ってくれたら嬉しい。  夕食時にはお兄ちゃんも加わった。 でも相変わらず食後はすぐに部屋に戻る。 学校とは違い家の中での事は、少し時間がかかりそうだ。 ところで買い物はどうだったのだろう。 特訓の成果は出たのかな? 気になったので自室に戻りLINEを送った。「今日の、成果を、楽しみに、してるよ……っと」 妙にワクワクしながら返事を待つ。 すると早速返信が来た。〈明日、新島から買い物に誘われたんだが着ていく服が無い〉 はぁ? 何それ。  私に返事をするよりも前に新島先輩の名前を出してくるとは思わなかったので、少し不機嫌になる。  それにしてもデートか……。 新島先輩がこんなに早くオトしにくるとは思わなかった。 なんか横槍入れられた気分。  とりあえずお兄ちゃんに詳しく問いただしてみよう。
last updateLast Updated : 2026-08-03
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その6
 翌日、登校するとみんながざわついていた。「どうしたの?」「2年の新島先輩に彼氏が出来たって」「えぇ! そうなの!?」 昨日の今日で急展開過ぎてつい声が出てしまった。 「くっそ~俺ワンチャンあると思ってたのに~」「お前じゃ無理だよ。まぁでも相手があんなにイケメンの先輩なら諦めもつくよな~」 意気消沈している男子たちの会話が聞こえる。 相手もそこそこに釣り合う先輩のようだ。 ドンマイお兄ちゃん。 ……ん?「ねぇねぇちょっといい?」「お、佐藤おはよー。どしたん?」「その相手の人って誰なの?」「あー、確かサトウトモヤっていうすげーイケメンの人だよ」  やっぱり!「つーか佐藤先輩って佐藤の兄貴じゃなかった?」「あ、そういやそうだったよな! 中学時代ヲタボッチ聞いてたけど信じらんねーわ」  目の前のクラスメイトの話に適当に相槌を打ちながらも、私の視線はめぐを探していた。 机にカバンは置いてある。 会話を続けながらさりげなくめぐにLINEを飛ばす。 既読はついたが返事はない。 ホームルーム直前になり、めぐが教室に戻ってきた。 「めぐ……」「ごめんねゆず。大丈夫だから」 その後もめぐはいつも通りに明るく振る舞う。 誰も指摘しなかったけど、その目元は少し赤くなっていた。 放課後、いつも通り部活に向かう。 当然だけど部活には新島先輩がいる。  めぐ、大丈夫かな。 私は声を掛けずにはいられなかった。「めぐ。部活、平気?」「も~何言ってるの? 今が頑張り時だよ!」  明るく振る舞っているけど、きっと強がってるんだ。 何か言葉をかけてあげないと。 私がそう考えているとめぐは一瞬立ち止
last updateLast Updated : 2026-08-05
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その7
今日は折角部活が休みなのに、出掛ける事なく、ずっと考え事をしていた。  『私やっぱり諦めきれない。友也さんの事が好きなの!』  めぐの言葉が頭の中で繰り返される。 めぐの為にもお兄ちゃんには何としてもデートさせないと。 そう考えていると、丁度お兄ちゃんが帰ってきた。〈今から部屋に来て〉 と送信し早速呼び出す。 ドアをノックされたのですぐに扉を開けてお兄ちゃんを強引に引っ張り部屋の中へ入れる。 「お兄ちゃんにはこれから二股掛けて貰います!」 めぐの為にも今回のデート計画は絶対に成功させたい。 そんな想いを悟られないように、私はあえて感情を高ぶらせる。「何いってんだ? そんな事出来る訳ないだろ」  まぁ普通はそういうよね。 だけど今回は私も引き下がるわけにはいかない。「あっそ、好きにすれば? ただ、めぐがどうなっても知らないから」 私は感情の消えた目で言い放った。  突然の二股勧告に不機嫌になるお兄ちゃん。「まぁまぁ、そんなに睨まないでよ」「これが睨まずにいられるか!」「別に本当に二股掛けろって訳じゃないから」「は? どういう事だよ?」 想定通りお兄ちゃんは食いついてきた。 勝負はこれからだ。「覚えてる? リア充に成る為の特訓の目標」「学校一のリア充になる事だよな?」「それもそうだけど、それの先の『彼女を作る』だよ」「あ!」 そう。本来の目的は『学校一のリア充になってから』彼女を作る事。 だけど、新島先輩が予想以上に積極的で目標を達成してしまった。「それじゃあまだゴールって事にはならないって訳か」「まぁそうだね」 お兄ちゃんは、「そっかぁ」と呟きながら俯く。「今、新島先輩と付き合って注目集めてるのにって思ったでしょ?」「う……」「今の段階じゃ学校一のリア充には遠いよ」「どこがダメなんだ?」「少なからず、男子女子共にお兄ちゃん達を快く思ってない人が居るからだよ。心あたりない?」「……」 お兄ちゃんはただ黙り、お腹をさすっている。 やっぱり何かあったみたいだ。「楓もそんな風に思われてるのか?」「新島先輩は元々が完璧美少女だったからほんの一部だよ。それもただの嫉妬とかだしね」 お兄ちゃんは「なるほど」といったような顔をする。 だけどすぐに疑問をぶつけてくる。「今の話と二股に何の関係があるんだ?」「言ったでしょ? 新島先輩に嫉妬してる子達がいるって」「ああ」「言い変えればお兄ち
last updateLast Updated : 2026-08-06
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その8
 無事に県大会を終え数日が経った。 ある日、嫌がらせを無事解決したことをお兄ちゃんから聞いた。 本人は「中居たちのおかげだよ」と謙遜していたけど、それもお兄ちゃんの力だと思う。  直近の憂いも晴らし、意気揚々と部活に行くとご機嫌な新島先輩がいた。「新島先輩何かいい事あったんですか?」「友也君にキスされちゃった!」  ちょっと胸がチクッと痛む。なぜだろう。 ていうか付き合ってるんだからキスくらい当然だよね。「まだしてなかったんですか? 確かに県大会も重なって忙しかったですけど、流石に遅すぎですよ」「そういうわけじゃないんだけど……昨日はすごかったの」 え? それってもしかして……。 いろいろ想像していると「もしかして妬いてるの~?」 と先輩に突っ込まれる。「そ、そんなわけないじゃないですか! 揶揄わないでくださいよ!」「アハハ、ごめんね」「も~……それで、昨日何があったんですか?」 と聞くと同時に部活が始まった。「あ、もう行かないと。詳しい事は後で話すね」「はい、わかりました」 練習を終え、インターハイ予選を兼ねる地区大会に向けての選抜メンバーが発表された。 私は引き続き新島先輩とダブルスを組むことになっている。「これからもよろしくね、柚希ちゃん」「よろしくお願いします。それで、さっきの話なんですけど」「そうね。とりあえず場所を変えましょうか」  帰り支度をし、私たちは駅前のスタバへ向かった。 席につき一息ついた後、新島先輩が昨日の事を話してくれた。 皆の前で堂々とキスだなんて、やるじゃん! 「すごい! 交際も順調なんですね」「うん、そうなんだけどね……」「何か心配事でもあるん
last updateLast Updated : 2026-08-07
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その9
 翌日の昼休み、めぐと一緒にお弁当を食べようとしていると、クラスメイトに声を掛けられた。「どうしたの?」「2年の先輩に柚希ちゃんのこと呼んでっていわれたんだけど」 そう言われて入り口を見ると、水瀬先輩が立っていた。 水瀬先輩も新島先輩程ではないけど、美人なので周りがザワつく。 「うわっ、水瀬先輩じゃん!」「やっぱ凄い美人だなぁ」 などと言っている男子に対して「あはは、どうもどうもー」 と、いつも通りの笑顔で応えている。 そんな水瀬先輩の所へ行き問いかける。「どうしたんですか?」「急に来てごめんね。話したい事があるんだけど、ちょっといいかな?」「はい、大丈夫ですよ」 私はめぐに一言告げて、水瀬先輩と一緒に教室を後にする。 移動している間、何故呼び出されたのか考える。 やはり、昨日の事だろうか? 「誰も居ないし此処でいっか」 と言って水瀬先輩は理科室に入っていく。 私も後に続いて教室に入り、扉を閉めた瞬間 「昨日はごめんなさい」 と言って頭を下げてきた。 少し驚いたが、やはり昨日の事で呼ばれたようだ。「そんな、悪いのは私です。あんなに失礼なことを――」「ううん、違うの」 私が頭を下げようとすると水瀬先輩に止められた。「今日はお礼を言いにきたの」「え? お礼……ですか?」「うん! 昨日柚希ちゃんに色々言われて考えてみたんだ」「……はい」「それでね、そのお陰で私、ようやく決心がついたの。私は佐藤の事を諦めない!」 そう力強く宣言する水瀬先輩の顔はどこかスッキリした様に見えた。「だから柚希ちゃんには感謝してるんだ。ホントにありがとう」 色々吹っ切れたようで良かった。 だけど、まだ一つ引っかかる事がある。なので私は躊躇
last updateLast Updated : 2026-08-08
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その10
「そんなの全然水瀬先輩の気持ち考えてないよ!」 私は思わず立ち上がる。「お、おい柚希、どうしたんだよ?」「うるさぁいっ! どんな気持ちでお兄ちゃんにキスしたと思ってるの? 好きで好きで堪らなくて、でもお兄ちゃんには新島先輩という彼女が居てずっと気持ちを抑えてたと思う。それでもやっぱり好きって感情が止まらなくてキスしちゃったんだと思う。そんな水瀬先輩の気持ちを考えずに勝負が始まる前から否定しないで! ちゃんと向き合ってあげて!」 私は一息にありったけの感情をお兄ちゃんにぶつけた。 涙がこみ上げて今にも溢れ出しそうになる。「でも……」「でもじゃないよ! お兄ちゃんは水瀬先輩から逃げてるだけだよ。水瀬先輩の気持ちと向き合うのが怖いんでしょ? 新島先輩への気持ちが揺らいじゃうんじゃないかって!」「……」 お兄ちゃんは黙って聞いていた。 私は涙を拭う事すら忘れ、ただ立ち尽くしていた。「分かった、分かったからとりあえず座れよ……な?」 お兄ちゃんは立ち上がり、嗚咽の止まらない私の肩にそっと手を置く。 私はその手を握り返しながら、縋るように呟いた。「お願いだからちゃんと向き合ってあげて? 同じ女としてのお願いだよ……」「……わかったよ、ミナミとちゃんと向き合う」 私の思いがどれだけ伝わったかは分からない。 だけど、お兄ちゃんのその言葉が気休めでない事だけはハッキリと感じた。「ありがとう、お兄ちゃん」「あ、ああ」 しばらくして、落ち着きを取り戻した私を確認すると、お兄ちゃんは「……じゃあ、そろそろ俺は部屋に戻るよ」 と言ってドアノブに手を掛ける。「お兄ちゃん」「なんだ?」「水瀬先輩とちゃんと向き合うって約束忘れないでね」「ああ、約束は守る
last updateLast Updated : 2026-08-10
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